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ホエールウォッチング ハナゴンドウ
クジラを探す船頭さん
クジラの潮吹きを見つけるため、リモコン式の舵を取りながら船を走らせる。船頭さんの目は真剣そのもの。僚船との無線交信も常に絶やさず、発見につとめている。
ハナゴンドウ
体長3bほどの最も小さなクジラであり、時折ジャンプをして愛嬌を振る舞っているが、いったん潜水するとどこに出てくるのか見当もつかない。




味噌汁を呑むカップル
船から上がって熱いみそ汁を
潮風にずっと当たっているとはやり身体が冷えてしまう。ツアーが終わって戻ると暖かい魚貝のみそ汁が待っていた。これぞ漁師の味。身体の芯まで暖まる。

南紀の太地町はかつて捕鯨の基地として栄えたところである。燈明崎にはクジラの油を使った初めての灯台がかつてあり、山見も置かれていた。広大な海を眺めているとそのころの勇壮な風景が想像できるようだ。
ふと「クジラに会ってみたい。」そんな衝動にかられたが、ホエールウォッチングと言えば、沖縄か小笠原諸島まで行かないと無理だろうと思っていた。ところが、ちょうど夕日を一緒に見ていたカップルに聞いてみると、なんとホエールウォッチングの観光船が那智勝浦町の津久井の港から出ていると教えてもらった。何はともあれ、さっそく電話をしてみると海が荒れていない限り毎日出ているとのこと。さっそく早朝6時出発の便を予約した。
5時半に集合と言うことなので、5時には宿を出る。まだあたりは薄暗い。集合場所に着くともう何人か集まっており、受付をしている。幾分緊張しながら列の後ろにつく。真っ黒に日焼けした船頭さんはちょっと恐そうにも見えたが、白い歯を出してにこやかにライフジャケットを渡してくれた。
「昨日は17b前後のマッコウクジラにあえたからね。今日もいいんじゃないかなあ。」
と、期待をもてる話に内心わくわくしていた。
ミーティングが終わりいよいよ乗船。
海は大変穏やかだ。と言ってもそれなりのアップダウンを繰り返しながら、小気味よいエンジン音を響かせて、沖へ沖へと出ていく。そして朝日をあびた海は一層きらめいて見えた。
しばらくはするとイルカの群を発見した。背びれを立たせ、猛スピードで泳いでいる。こんなに間近でしかも海で泳いでいるイルカを見るのは初めてだ。潜ってはまたジャンプをして、とても元気がいい。
さらに船は沖を目指す。30分が経過をした。まだクジラを発見することはできない。船頭さんの顔も少し険しく見えた。果たしてクジラに出会えるのだろうかと少し不安を感じながら、ひたすら沖を見つめる。それまで往来の激しかった船の数もぐっと少なくなり、見渡す限り海海海の連続だ。
急に無線交信が激しくなった。僚船がクジラを発見したのだろうか。船頭さんがマイクを握る。船室に戻り地図を確認しているのだろうか。急に動きが慌ただしくなってきた。船はエンジンをフルスロットルにして、さらに走り続ける。
遠くに何か見えてきた。イルカにも見えるが、船頭さんが「ハナゴンドウクジラだ。」と叫んでいる。体長は3bほどで、一番小さなクジラだという。右に見えたかと思うと左から顔を出す。ぐっと潜るとしばらくは出てこない。とってもすばしっこいやつだ。海の中にいるので何となくぴんとこなかったが、間近で見ると、やはりほ乳類なんだなと言う親近感がわいてくる。しばらく戯れるとまた静かな海に戻る。
もうずいぶん遠きに来たが、マッコウクジラは発見することができない。船頭さんが言うには、
「一つのところで餌をとっていると少なくなってしまうので、今日はもっと沖まで行っているのだろう。」と説明してくれた。
とても残念だが今回はあきらめる他ないようだ。あくまで自然が相手なのだから仕方がない。それでも小型ながらイルカや、ハナゴンドウクジラに会えたことはこの旅のとても良い思い出となった。港への帰り道、潮風をあびながら、またいつか必ず来ようと心の中でつぶやいていた。