1998年7月 釧路

撮影・取材 入江進

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●いわしのほっかぶり
通常お寿司と言えばわさびが付き物であるが、イワシと言うことで酢飯の上にはショウガが乗っている。その上にイワシ。普通のイワシ寿司はここでおしまいなのだが、この寿司は大根のほっかぶりをしている。薄切りにした大根を甘酢でしめたものだ。これがまたしゃきしゃきとして食感がよい。また、薄切りのため半透明となっているため、寿司がとても上品に見え涼しげだ。味はと言えば、イワシの生臭さなどはいっさい感じられず、さっぱりとしているのだが、イワシの味わいはしっかりとしているという、バランスのとれたもの。食欲があまり無いときでもすんなりと入ってしまう夏向きのお弁当と言っても良いだろう。ユニークなネーミングのにくい一押し弁当だ。
●かに飯
パッケージはいかにもかにが入っているといったいラストが書かれてある、シンプルなものだ。少し鼻を近づけてみる。かにの風味がやんわりと香ってきた。期待がもてそうなその香りに早々ひもを解く。ふたを開けるとそこには、ゆで上がったばかりのずわい蟹の上精肉がぎっしりと乗っている。、甘辛く煮付けた椎茸とグリーンピース、紅しょうが、錦糸卵が添えられ、彩りも鮮やかに盛りつけられている。思わず「うまそう」と歓声を上げたくなるほどだ。
一口ほおばる。軽く甘じょっぱく味付けされたかにの風味が広がり、これぞ北海道の味覚だと感じさせる。ちゃめしも薄味だけれども出汁の利いたしっかりとしたもので、とても相性が良く、一口食べるごとに「うまい」とうならせられてしまう。もうそうなると箸は止まらない。一気に平らげてしまった。これもひとえにゆでたての新鮮なものを使っているからであろう。そんじょそこらのかに弁当とはひと味もふた味も違うおいしさに、必ずファンになってしまうだろう。
ちょっと気になるのが紅しょうが。彩りは大変美しく、見た目はよいのだが、味が強いのでかにの風味を殺しかねない。はじの方にちょこっとあるくらいでも良いのではと思った。
また、かつては花咲がにを使っていて、その濃厚な味わいに驚嘆したものだ。かに弁当の中では異色中の異色を放っていただけに、惜しまれる。是非花咲がにの捕れる時期だけの、期間限定と言うことでも良いから復活していただきたいものだ。
それとこの駅弁を売っているお店は、特急列車が入ってくる時刻にしか開かないので気を付けたい。実際私も数時間待ちを経験した。どうしても待てないと言う人は、あきらめなくとも良い。幣舞橋に隣接する『フィッシャーマンズワーフ MOO』でも、5分ほど待てば、作りたてを購入することができる。
釧路滞在中に3回も食べてしまった。超お奨めのはなまる弁当だ。
●あきしゃけ弁当
釧路沖でとれた秋鮭がでーんと乗っている。ちょっと塩加減が強いのが気になったが、他のおかずが比較的薄味なのでバランスがとれている。そしてその横には艶やかなイクラが添えてある。三角形に仕切られたもう片方には、エビ、あっさりとした味付けでぽくぽくした帆立煮、昆布巻き、ふきの煮付け、はんぺん、目を見張るほどの大きな厚焼き卵は出汁が良くきいている。クリームコロッケはとろけるような味わい。