撮影・取材 入江進

1|2|3|


田の神弁当 さつま弁当
●田の神弁当
薩摩地方のあぜ道で見かける石像は、風、水、虫の被害から田んぼを守るために祭られた『田の神サァ』は、右手にしゃもじ、左にお椀頭にコシキを引っかけた野良姿。お供え物として献上した家庭の味を現代風にアレンジしたもの。これが田の神弁当だ。
お弁当を持った瞬間ずしりと来る手応えに期待を膨らませる。それもそのはず豪勢な二重折りにになっているのだ。ふたを開ければ薩摩の味覚がたっぷりで、黒ゴマのかかった俵型のご飯も食べやすく、とてもおいしい。シャケ、串揚げ、薩摩揚げ、鳥の唐揚げ、卵焼き、はす、こうや豆腐など、彩りも美しく盛られている。キビナゴの酢漬けはさっぱりとしていて食べやすい。郷土色豊かなお袋の味が味わえるお弁当。
●さつま弁当
和紙に包まれた豪華弁当。見た目非常に美しい。錦糸卵の黄色とエビの赤の鮮やかさが目を楽しませてくれる。特に酢飯の酢の利き具合が絶妙で、食欲をなくすこの時期にはもってこい。いくら、りんご、しゃけ、海苔が中にまかれたたまご焼き、夏ばてを解消してくれる、ほんのり甘いお豆、キビ名護の酢漬け、一口噛むと香ばしい香りのする薩摩上げ、骨付きのお肉にかぶりつくとほろりと落ちる柔らかさの豚骨、と大変豪華なお弁当。日に三食しか店に出ない幻のお弁当。なすみそも絶品。
とんこつ弁当
●とんこつ弁当
「とんこつ」は古く中国南部琉球国との交流から生まれたものと伝えられているという。何とも歴史を感じさせる郷土料理であり、これを旅の想いで駅弁にしたのがこのお弁当というわけだ。
 キノコ、ごぼう入りの茶飯は豚骨の出汁で炊き込まれ、美味な味わい。骨付きのばら肉をぶつ切りにし、黒砂糖や、焼酎とともに4〜5時間も煮込んだ肉は、油もとれ、かぶりつくとほろりととれる柔らかさで、口の中でとろけてしまううまさだ。たけのこ、にんじん、大根、こんにゃくの煮物が添えられていて、バランスのよい和風弁当に仕上がっている。ビールのおつまみにも最適な落花生の煮豆。歯触り最高の山川漬け、そしてコンニャクと豚肉の細切りを炒めて味噌とあえた「豚みそ」はこたえられないうまさだ。
もう少し豚骨が大きいイメージを持っていたが、それほどでもない。豚骨弁当と言うからにはもう少し大きくともよいのでは。薄味の茶飯は豚骨との相性がとても良く引き立てている。